トランプ政権とビザの問題
アメリカではトランプ政権に変わってからビザが取りにくくなった、厳しくなったと騒がれています。
3月に大統領令で労働ビザの定番であったH1-Bビザの審査が厳しくなりました。
世界中の人がトランプ嫌いから、最初の「ビザが厳しくなった」という文字だけをみて批判を始めます。
実際トランプ氏はものごとを1面からしかみていないところもあり、発言においても毎日のようにどこか間違った発言を続けており、先日ワシントンポストには「トランプ氏が今日、就任後はじめて間違った発言を1つもせずに1日を終えるという快挙を遂げた。」という皮肉が書かれていました。
総合的にトランプ氏の政策は考えの浅いものが多く、今回の「ビザを厳しくした大統領令」は中身を調べてみると、一面から見れば良い政策であり、よく考えてみると良くない部分も見えてきました。
H1ーBビザのこれまでの審査方法
H1-B、労働ビザはアメリカに拠点を置く企業が外国人を雇う時に発行するビザで最も定番のものです。
アメリカに拠点ですので、アメリカに支社を持つ日経企業など外国の企業も申請できるわけです。
アメリカが年間でこのビザを発行できる数はたったの65000です。
当然これよりも多くの申請が寄せられ、年間の申請数は23万件ほど。
その際には申請者の中から抽選をして、当選した人だけがビザの申請に進めるということでした。
これが今までのシステムです。
正直、すでにちょっとフェアではないですよね、能力のある人ではなく、抽選に当選した人からアメリカに来て働くことができるのですから。
これを悪用するインド系企業
このシステムに目をつけたのがインド系企業。
この抽選システムだと1人1通応募できるわけです。
つまりインド系のアメリカに拠点を持つ企業が社員たちにインド本国でビザを申請させ、当選すればアメリカに送り込めます。
しかし渡米後はその社員はアメリカの相場の給料より安い賃金で働かされます。
ハーフタイムという契約で渡米させてフルタイムと同じ労働量を強いるなどするわけです。
中国などでは安い賃金でも仕事がないからと働く人は多くいますが、インドでもこのような不当な雇用形態でも働きたい人が多くいるのでしょうか。
似たようなシステムを使う日経企業
この似たようなシステムを使う日経企業もあります。
私の知っているのはH1-Bとは別の労働ビザでしたが、ビザを発行して安い賃金で働かせ、その人はそれだけでは生活費が足りないので、その仕事の後は生活費のためにレストランでバイトしていました。
もちろんバイトは違法ですが、生活のためには選択肢はありません。
そんな感じで来てから騙されたとわかりながらもせっかく渡米までしたからと1年ほど働き、仕事ばかりして日本に帰っていきました。
正直、かなりのブラック企業ですが日本の求人から「ビザを発行してアメリカでの生活を経験することができます。」と書かれていれば聞こえが良く、飛びつく日本人は多いでしょう。
そのような感じで毎年渡米してくる日本人がいて、このような企業は潰れず、今でも安い人件費で人を働かせています。
日本から仕事を探してくる人はくれぐれもそこを気をつけてよく考えてください。
その大規模なものを行なっていたのがインド系企業ということかもしれません。
インド系企業による悪影響
このインド系企業の安い人材で人を使う会社ですが、これらはTata、Infosysなどのアウトソーシング系です。
これはトランプ氏がよく言う「アメリカで問題になっている外国人が安い賃金で働き、アメリカ人の雇用を奪うシステム」と共通のものです。
上に書いたようなシステムがあるため、インド系の企業に委託する方が安いのでそちらに依頼し、そのぶんアメリカ人の仕事が減ると考えるわけです。
実際はこれはトランプ氏の言うほど単純な問題ではないのですが。
そしてこのインド系企業に対するH1-Bの発行数ですが、実に3万3千ほど、つまり半分以上の労働ビザがこれらに持って行かれていたわけです。
ビザ申請はどう厳しくなったのか?
このような背景を見てトランプ氏が反応しないはずがありません。
そこでトランプ氏が出した大統領令は「抽選を廃止して、取得賃金の高い外国人から申請できるようにしろ」というものです。
単純に見れば賃金の高い、つまり能力の高い外国人から労働ビザが取得できるシステムになったわけです。
これによりインド系アウトソーシング企業のビザ独占を防げば実質アメリカ人の仕事も増えるし、総合的に見てより優秀な人材がアメリカに入ってくるようにはなると考えたわけです。
メリットとデメリット、どちらが大きいのか?
職種による問題
とはいえ職種によって賃金は違うので、IT系や弁護士などの会社は多くの外国人を雇うことができるようになります。
逆にマーケティング系など、それらに比べて賃金が平均ぐらいの職種であればいままでより人が雇えなくなります。
そのため賃金のもともと高くない職種の企業は外国の優秀な才能が入って来なくなり、企業の能力自体は低下してしまうことになります。
アメリカの労働の根本の問題
実際アメリカは安い労働力の存在によって保たれて来た国という反面もあります。
わかりやすい例でレストラン業などは安い賃金でメキシコ移民などが裏で働いているため、人件費を削減できるのでレストランの維持費が払えて維持できているというのが現状です。
そこを厳しくしてしまうと合法的な賃金を払うことになり、経営維持不可能になって潰れていきます。
これからビザの改定により能力の高い人材が入って来ますが、これまでインド系アウトソーシングを利用していた企業は、その高い能力でなくても間に合うぐらいの仕事をアウトソーシングに依頼して人件費を抑えていたということになります。
そのような安く使えていた人材が減り、人件費が上がるということは企業側にとってそれを払う余裕があるのか、という問題にもなります。
払う余裕がなければ少ない人生でやっていくしかなく、そうなればアメリカ人雇用者の仕事がハードになるだけで雇用数は増えません。
最悪企業が潰れ始めます。
まとめ
このようにビザの問題は一面から見れば良い面が見えますが、後半に書いたように様々な問題があります。
まだこれらの問題は浮き彫りになっていませんが、これから果たしてどう影響してくるのでしょうか。
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