はじめに
よく日本人は無宗教、神を信じていないといいます。
そして多くの日本人もこのことはよくわかっておらず自分たちは無宗教だと思っています。
日本人は実は全く無宗教ではありません、しかし現代の多くの人はそれを忘れています。
そもそも人が亡くなれば埋葬を行う、この埋葬方法を持つということが宗教を持っているということです。
ではどのような歴史があって日本人は自分たちの宗教を忘れてしまったのでしょうか。
日本古来の宗教
日本には古来から神道(しんとう)という民族宗教があります。
この神道には日本の島国という環境のためか、他の民族宗教と違う性格があります。
日本神話の神々
神道の物語である日本神話は平安時代に古事記・日本書紀に編纂されました。
民族宗教の物語、神話ではよく王族とは神の一族で人よりも偉大な存在である、という表現がされています。
日本神話には八百万の神という様々な神がでてきますが、ここにも実在の王族をモデルとして描かれていると推察できる部分が見られます。
例えば主神アマテラスは邪馬台国の女王、卑弥呼がモデルと言われ、その弟の海の神スサノオは日本へやってきた海洋民族の王を表現しているといいます。
日本はアイヌなどの原住民がいた国に中国、朝鮮から様々な民族がやってきて交わり、今の日本人の形になりました。
そのため日本神話にでてくる様々な神もその様々な民族がモデルとなっているのかもしれません。
初代天皇・神武天皇
神武天皇は日本の初代天皇とされ、主神アマテラス大御神のひひひ孫にあたります。
つまり現存する天皇は神の直系の子孫ということになります。
この初代天皇の時代は2600年前にもなる神話の時代であり現存していたはっきりした証拠はありませんが、実際に存在が確認されている天皇だけでも日本の王室は1500年の歴史があり、世界最古の王族となっています。
2番目はデンマークで歴史は1000年ほど、つまり日本の王室は世界で断トツの長い歴史を持っていることになります。
キリスト教、イスラム教では神の存在を想像して祈ります。
日本の宗教ではその神が目の前に現存しているのです。
日本人が宗教に無関心な理由
宗教同士の争いの歴史がほとんどない
他の国では政治は宗教を民衆を統一するための手段として使います。
キリスト教、イスラム教、さらにそれぞれの宗教内の派閥などで国が分かれ、国はそれぞれ宗教を利用することで民衆の思想を統一してきました。
そして有権者は信仰の違いを他国に攻め込む理由にして領地争いのために戦争をしかけていきました。
このように他国では掲げる宗教を自分たちのアイデンティティとしています。
日本ではこのように宗教を掲げて戦争になるということがなかったのです。
国内で戦争は起こるものの、宗教のための戦争を起こしたのは仏教徒の一向一揆ぐらいで、これも織田信長に鎮圧されましたが、信長の方は別に宗教を掲げて迎え撃ったわけではありません。
八百万の神という考え方
この仏教ですが、中国から日本に伝わり、神道以外で初めて日本にやってきた宗教となります。
このようなことになると考え方の違いから宗教戦争となるのですが、なんと日本では争うどころか八百万の神のようにいろんな神がいるんだから仏教の神もありだろう、と自国の文化に吸収してしまいます(神仏習合)。
そのため今の日本にはお寺の中に神社があったりと様々なところで神道と仏教が共存しています。
キリスト教の布教
15世紀にはイエズス会が日本に来て布教しようとしますが、全くうまくいかなかったといいます。
八百万の神の日本では神が一人しかいないなどという一神教の考えはあまりにも違いすぎて理解されませんでした。
日本では中国の先祖を敬う文化を吸収した仏教が入って来ていました。(インドで生まれた時の仏教には先祖に関する教えはない)
そこで「我々の神を信じれば天国へ行けます」などと布教すれば、「ならあんたたちの神を信じてなかった我々の先祖たちは地獄にいるのか?だったら自分だけ天国行くなんて罰当たりなことできるか!」などと言い返されたそうです。
全然布教がうまくいかず、宣教師たちも散々頭を悩ませました。
そして最終的には豊臣秀吉に日本人を奴隷として輸出していた、長崎を勝手に自分たちの領地にしていたなどの悪事が見つかり日本でキリスト教は禁止されます。
天皇を守るという文化
他の国では王権が絶対の力をもち、民衆はその権力社会の中で生きていました。
その支配階級への怒りとして平等主義を掲げた宗教のもとに団結し、王権の語る差別主義に対抗してきました。
ところが日本ではこのように権威を振りかざす存在が王ではなく、その周りの士族のでした。
またそれらが権威を振りかざした時には対抗する組織として別の士族がこれを打ってきました。
例えば源平の合戦の時の源氏、北条氏が執権の権威を振りかざした時の足利氏です。
幕府の誕生
平安時代、天皇は後白河法皇の時代。
平清盛は貿易などで金を蓄え日本の半分を収めるほどの力を持ちます。
清盛は自分の家系のもので官位を独占し、世の中は平家一門の好き放題です。
法皇はその平清盛を恐れ、領地を没収しようとしますが、逆に幽閉されてしまいます。
そこで法皇の息子の以仁王は源氏に頼み平家を倒してもらいます。
しかし源氏は平家を倒した後、武士による政治を行う組織、幕府を作ります。
これにより天皇は政治を行う権力を奪われ、日本という国を象徴するためだけの飾りにされてしまいます。
天皇の保護=日本の保護
その後、室町時代の足利幕府、戦国時代を経て徳川幕府と天皇は将軍に守られつつも力を持たない時代が続きました。
士族にとって天皇の保護は、自分は日本という国を保護する権力を持つ第一人者だるという力の象徴でした。
つまり一神教が神のもとに思想を統一していたように日本も天皇という存在のもとに民族が統一されてきました。
そういう意味で日本人はずっと独自の宗教を守ってきているのですが、あまり外国のようにこれが宗教だと意識する感じにはなりませんね。
GHQの操作
日本で一瞬だけ宗教的意識が強くなった明治時代
そして江戸時代末期、大政奉還により政権が天皇に返されます。
この時には天皇という神をを中心とした国という宗教的意識が強まり、それまで神仏習合とされてきた文化もこの時だけは神道の国に戻るという意思が働き、仏教を分離する神仏分離がおこなわれました。
もっとも仏教は日本に深く浸透しており、この分離は不可能という結果になったのですが。
第二次世界大戦
この戦争の時には日本人も現人神=天皇陛下を守ることが自分たちの日本人としてアイデンティティを守ることだと強く意識しました。
結果敗戦となり、その後GHQに作られた教育制度ではこの天皇を中心とする国民の団結を脅威と考え、1945年「神道指令」というものが出され神道が禁じられました。
しかし日本に浸透している神道を禁止することは日本に根付く様々な習慣が行えなくなることになり、禁止はほぼ不可能となり1949年この指令は大幅に緩和されました。
とはいえ一般的にはあまり教えられることはなくなりました。
まとめ
このように日本の神道にはすべての神を受け入れる性格を持ち、また島国であるため宗教による支配も受けることがなく、歴史上宗教を意識する必要のある事件がありませんでした。
そのため外国ほど自国の宗教を意識する必要に迫られなかったのでしょう。
第二次大戦時は唯一その神道国家としての意識が強くなっていた時期でしたが、敗戦によりGHQに神道を教えることを制限されます。
現代の日本人が自分たちの宗教であった神道を忘れているのは、そのGHQの影響で教えなくなったのが一番大きいのではないかと思います。
他の国では宗教は子供の頃に学校や教会で学びますから。
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