はじめに
世界の様々な劇場の中で最も有名な劇場の1つであるニューヨークのカーネギーホール、ここで公演するということは世界中のミュージシャンの憧れとなっています。
そこで公演するには世界でトップの実力が必要になり、生涯をかけて練習しないとたどり着けないという話もあります。
しかし実はお金と名前を集めることができれば割と実現可能な目標でもあります。
では私が実際、このホールを抑えて公演した体験談から、その方法をお伝えします。
カーネギーホールとは?
ではまずカーネギーホールとはどのような劇場なのかを知っておきましょう。
1891年、アメリカの鉄鋼王と言われたアンドリュー・カーネギーによって建てられます。
カーネギーはロスチャイルドやロックフェラーに次ぐアメリカの大富豪の一人です。
このような富豪の遊びの一環として建造されたわけです。
劇場内のすべて計算されつくした音響設備や劇場の形は最高の音を観客に届けることができ、ミュージシャンにとってそこで演奏することは最高の楽しみとされています。
1925年にはアンドリューの未亡人により売却され、それをニューヨーク市が購入します。
そのため現在はカーネギー財団の所有物ではなく非営利のカーネギーコーポレーションという団体によって運営されています。
3つのホール
中にホールは3つあり、メインホール2804席、ザンケルホール599席、ウェイルリサイタルホール268席です。
私が抑えたのは一番小さいウェイルホールでしたが、ここだけでも平日の午後半日借りるだけで1万ドルしました、110万円ほどです。
会場費の内訳
1万ドルですが、内訳では会場費だけだと3000ドルなんです。
それ以外に何がかかっているのかというと謎の内訳が多く記載されていました。
NYタイムズなどの新聞や雑誌へのコンタクト方法とその権利(コンタクトの際にカーネギーの名前を使うことができるだけで、自分で公演をすると新聞社や雑誌へ問い合わせなければならない)、チケットやポスター、プログラムの制作権利など、つまり「カーネギーホールという偉大な劇場の名前を使わせてあげてる料金」ということです。
さらに謎だったのがアッシャー代、入り口でチケットを切る人ですが、これもカーネギー側が用意してその料金が3000ドルとなっていました。
どう考えてもおかしいんです。
アッシャーは三人ほどしかおらず、公演日の数時間そこにいてチケットを切るだけの仕事、それで3000ドルもするというのです。
明らかにこのお金はアッシャー代という名目にしているだけでどこか別のところへ流れているのでしょう。
この1万ドルはすべて払わなければならない料金として設定されているので、最低抑えるのに払わなければならない料金というシステムになっています。
予約の問い合わせ
一番苦労するのが予約するできるまでの問い合わせです。
向こうがかなり上から目線で話してきてなかなか話が進みません。
いいかげんな人に公演してもらっては困るので厳しくしているのでしょう。
こちらはパフォーマーの人数、必要な機材と使用する楽器などをできるだけ細かく書いた書類を作成する必要があるでしょう。
書類がしっかりしているように見えるほど信頼性があります。
パフォーマーの経歴もすごく見えるようにしっかり書いて送りましょう。
基本的に音楽の会場ですので、すごいミュージシャンが公演したいという内容にする必要があります。
日本の伝統芸はやりやすい
私の場合は日本の琴や尺八の家元の方達と公演しましたので、その方たちを和楽器のマスターミュージシャンとしてプッシュしてアピールしました。
実はカーネギーの方々は日本の文化になると何がすごいのかの情報はほとんど知らないため、日本の伝統芸の人をすごいとアピールすれば簡単に書類が通ったりします。
その代わり楽器のこともよく知らないので「17弦の琴を使う」ということで英語で17srings Kotoと書いて送ったのですが、返事で「17個も琴を置くスペースはない」などと返事が帰ってきたりしました。
よく読んでくれてないのかわかりませんが、こんな感じのやりとりが続きます。
ダンサーを使う場合
ダンサーも一緒にコラボレーションするなどのグループもあるでしょうが、予約する時はミュージシャンを中心にプッシュしましょう。
ダンサーが踊って舞台を傷つけるなどは嫌がられ、踊ることを中心にアピールすると失敗する可能性が高いです。
ちなみに踊り自体は禁止ではなく舞踏やコンテンポラリーダンスのあまり激しい動きをしない踊りを裸足で踊るのであれば簡単にOKがでます。
ちなみに踊るように作られた舞台ではないので床は滑りやすく、靴下などで踊るのも難しいでしょう。
公演の際の様々な禁止事項
劇場内での写真撮影、ビデオ撮影にも厳しいルールがあります。
写真はカメラマン一人のみによる撮影が許され、それ以外の人が撮ると罰金のような形で追加料金をとられます。
つまり劇場でパフォーマーが公演前に携帯で写真を撮って、「これから公演です!」などとSNSに写真をあげたりすれば証拠も残りますし追加料金を確実にとられるでしょう。
また公演の音の録音も禁止。
ビデオもカメラを回して良い時間は公演の間で30分までとなっています。
回すカメラの数も1台のみ、それ以上から追加料金です。
つまりテレビ撮影などが入ると、そのテレビ局のカメラでしか映像はとれず、その時間も30分までです。
そのカメラの後ろでストップウォッチを持って時間を計っている人までいるのです。
このように厳しくすることでブランドの価値を保っているということもあるのでしょう。
公演当日
ここまでいろいろとルールが多くてピリピリしたイメージでしたが、公演当日に手伝ってくれるスタッフはかなりフレンドリーでした。
ここの通路には入るな!とか下手に椅子などを動かして壁を傷つけられるのが嫌なのか、勝手にセッティングしようとすると怒られたりはしますが基本的にいままでダメだろうとおもってきたことがすんなりOKって言ってくれたりします。
その代わり時間も厳守で予約してある時間ぴったりに劇場を空けないと追加料金を取られるよ、と追い出されたり。
この際も現地スタッフは上から目線でなく、「上の人がモニターで見張ってるからでていってくれないと困るんだよ」とやんわり言ってくれました。
しかしこのように時間厳守ということがしっかりしているのはアメリカでは実はとてもめずらしいんです。
まとめ
以上のようにとても敷居の高いイメージのあるカーネギーホールですが、日本の伝統芸の方とコラボする、クラウドファンディングなどで劇場使用量を集めるなど、行動すれば割と現実的に実現可能なことでした。
生涯をかけて練習する必要が…などと言われることもありますが、私は20代のうちに自主公演を成功させました。
要は行動力次第ということです。
小ホールでもこれを一度実現すれば自分の経歴に「カーネギーホールで公演を行う」と書けるので自分のそれからのパフォーマー人生が大きく開ける助けになります。
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