はじめに
フルタイムのダンスカンパニーの生活に入る前にその下準備、契約や住む場所の確保や交通手段などが必要になります。
契約の際の注意
契約の際の注意ですが、アメリカの場合は日本のように給料は最初はいくらと相手側が掲示してくるのではなく、個人的な交渉になります。
拘束時間を考えて大体時給で10ドル以上にはなるように計算しましょう。
私の場合は週6日で1日リハーサルが6時間半でしたので1日65ドル×6日=390ドル。
なので週400ドルぐらいはもらわないと割にあいません。
しかし外国人、特に日本人はそのような文化を知らないのでふっかけられて週300ドルでどうだ?と言われることがあります。
もしこのように相場より安く契約をしてしまうと、そこから一年間、他のダンサーより安く使われることになり精神的な苦痛を受けます。
なのでお金の話は周りから相場をちゃんと聞いて常に気をつけるようにする必要があります。
日本のお金の話はやらしいのでしない、という先入観は損しかしないので忘れましょう。
住む場所
契約をして最初に困ったのが住む場所と車です。
カンパニーによっては寮があって住む場所も与えられるのですが、このカンパニーにはそれはありませんでした。
当時はあったらしいのですが、アメリカ自体の景気が悪くなって提供できなくなったそうです。
しかもニューヨークのように鉄道もないので車移動が必須となります。
そこで周辺で住む場所を探す必要があるのですが、なんせ比較的に富裕層が多く住むエリア、アパートの家賃が800ドルぐらいします。
給料が週400ですのでそこはなんとか払えるとしても車が買えません。
バレリーナたちの生活
バレエカンパニーのバレリーナたちは、アメリカ人は車は当然のように持っていますし、フルタイムカンパニーのダンサーという経歴があればリハーサルの後の教えの仕事も簡単に見つけることができて生活は十分できていました。
しかし外国人がこのような地方で教えの仕事を見つけるのは簡単ではありません。
カンパニーも付属学校があるのですが、言語の問題で外国人には最初は教えさせてくれません。
金持ちバレリーナは性格が悪い?
ちなみにカンパニーには日本人のバレリーナもいましたが、高校から日本を出て留学しているらしく、生粋のお嬢様でした。
生活費はすべて日本から仕送りしてもらっており、カンパニーで稼いだお金はすべて自分の服や化粧品などの買い物に使い、カンパニーがオフの時期は、これまた親の仕送りでラスべガスなどに旅行して遊んでいました。
日本からすると世界で活躍するバレリーナはすごいという印象でしょうが、実際はダンスさえやってれば親がお金を出してくれて、一般の人がしているようなお金の苦労も知らず、常識のない決して尊敬できないような人が多かったです。
かたや生活費ギリギリで自力で必死に留学する人も多いなか、このようにお金に困ることなくダンスだけの人生が送れる人もいる。
バレエの世界というのは本当に人生が不公平に感じることが多いです。
バレエというと多くの人は優雅な世界だけを想像して希望を抱きますが、このような現実が裏にあるということも知っておいてほしいものです。
決して表に見えているような綺麗な世界ではなく、人間関係も嫉妬の連続でドロドロになりやすいです。
映画の「ブラックスワン」などはそのドロドロの部分を映画化していましたが、あれを見た時に私は初めてバレエの世界の現実を映像化した作品がでてきたと思ったものでした。
最もすべてがこういう人たちというわけでなく、親の仕送りを断ってオフシーズンにレストランでバイトする人もいて、このような人は本当に尊敬できるダンサーでした。
日本では職業を1つに絞るべきだと考える文化があり、副業にもいい印象を持たない人が多いのでダンサー=ダンスで食べるべきと考える人も多いでしょうが、下手なプライドを持ってダンス以外の仕事をせずに他の人生経験を積もうとしないダンサーと、泥臭い仕事もして踊る以外の努力・勉強もするダンサー、どちらが人間として素晴らしいでしょうか?
地方での生活にはアメリカ人の助けが必要
私は車を手にいれるほどの財力はなかったので、最初はニューヨークから片道2時間かけてバスで通っていました。
他のダンサーやカンパニーの関係者にどうやって生活しているのか聞き、周りに住んでる人を紹介してもらい、月400ドル払って部屋を貸して、カンパニーへも車で送り迎えして助けてくれる人を見つけました。
アメリカ人は人種差別をする人もいますが、このようにオープンで良い人もいます。
まとめ
こうしてフルタイムのダンスカンパニーで生活する基盤ができました。
ちなみにこの町の周りにも日本レストランはありますが、働いてる人は中国人、台湾人、韓国人で当時この町にいた本物の日本人はカンパニーにいた日本人たちだけでしょう。
アメリカには多くのアジア人がいるような印象を受けますが、実際はアジア人は全体の5%しかおらず、地方に行くとその現実が見えてきます。
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