これまで学生ビザを取得して渡米する方法まで述べてきました。
次は学生時代の過ごし方ですが、この時期の目標はO-1Bビザ、通称アーティストビザを取得するための経歴を貯めることです。
ダンサーが仕事をするのに必要なアーティストビザ
このアーティストビザがないとフルタイムのカンパニーや大きなオーディションに受かっても雇ってもらえません。
よくオーディション受かればカンパニーが発行してくれと思っている人もいますが、そんな権力はブロードウェイミュージカルにすらありません。
むしろなんで働けるビザもないのにオーディション受けたの?と怒られてしまうこともあります。
なのでまずこのビザを持っていないとどうにもなりません。
アーティストビザの取得条件
ではアーティストビザに必要な資料というのを挙げていきましょう。
移民局ホームページには全部で10項目挙げられています。
それらをわかりやすく日本語に書き直してみました。
これらのうち最低3つクリアしていれば取れると言われていますが、移民局がどう審査するかは運によるところも大きく、できるだけすべてのカテゴリをクリアしている方が良いでしょう。
国内外での賞
ダンサーであればコンクール入賞、ダンスバトル入賞などです。
紙面での資料が必要になりますので日本での賞状歴があれば絶対に日本から持ってきておいてください。
それが行われたというイベントそのものの情報から必要になるでしょう。
素晴らしい経歴を持った人しか入れない団体(Association)のメンバーであること
ダンスカンパニーなどですね。
そこでの活動の証明なので舞台に出たプログラムや契約書などが有効です。
ストリートダンス系の場合、プログラムが発行されないので資料が集めにくいでしょう。
なのでステージ系ダンスよりビザはとりにくいです。
イベントのフライヤーなど、自分の写真、名前、詳細が載っていれば有効ですので、これも日本のものがあれば持ってきておきましょう。
有名団体や大きな施設で主役級の役や重要な役をやった資料
舞台での主役級の役ということです。
これはバレエやミュージカルの人はありえますが、それ以外のダンスだと特に役などないのでなかなか証明が難しいです。
業界紙、有名な出版物、主要メディアの記事:発行部数が必要です
テレビに出演した、雑誌や新聞で取り上げられたなどです。
これは日本よりアメリカの方が得られる確率は高いかもしれません。
最近はブログで趣味でダンスのレビューを書いてる人もいて、その人が有名になって影響力を持つなどということもあり、そのような人からのレビューも十分有効です。
テレビはビデオなどは移民局は見てくれないので、テレビに自分がでている映像を写真にするなど紙面に加工する必要があり、その放送が本当にあったことを示す資料も必要です。
アメリカのニューヨークタイムズなどに載ると非常に強力です。
パネリストや審査員をやったことがわかる資料
コンテストやダンスバトル、オーディションの審査などですが、これらは紙面での証拠が基本的に残らないので証明をするのが難しいです。
オファーが来たメールなどを残しておいて印刷するなどする必要があります。
業界のトップからの推薦状
ダンスであればダンス界からの推薦状で、これはダンサーの基準ですごい人、うまい人ではなく、一般人から見てすごい人という基準で考えてください。
ダンスバトルで常に優勝しているアンダーグラウンドのダンサーよりもテレビで芸能活動しているダンサーの方が強いです。
学術論文
これはなかなか持っている人はすkないでしょう。
ダンス専攻で大学などに行けば書いた人もいるかもしれませんが、さらにその論文がなにかしら高い評価を得ているものでないといけません。
展示会や発表会等で作品を展示した資料
こちらも舞台のプログラムなどです。
中でも自分が振り付けしたり、ソロやデュエットの作品の方が有効度が高いです。
基本プロ活動のものですが、日本の発表会のプログラムなども有効度が高いです。
正直アメリカの移民局には日本語の資料ではどれがプロなのかの区別はつかないうえに日本のプログラムは作りが良いので印象が良いです。
ちなみにアメリカのプログラムは本当にただの紙に演目が書いてあるだけです。
なのでアメリカのダンス学校の発表会などはプロ活動に見えないので弱いようです。
高額な報酬
いままでダンスで大きな仕事をしてちゃんと報酬を得ているかどうかということです。
これは日本の経歴でしか不可能です。
アメリカで学生ビザでお金を稼ぎましたなんて言ったら違法ですからね。
日本でイベントや舞台で報酬が支払われたということがあれば明細をちゃんととっておきましょう。
とはいえ高額な、ですから相当大きい仕事でないとこの条件はクリアできず、ダンサーでは難しい条件となります。
商業的成功:観客動員数が必要です
大きい会場で踊ったなどです。
世界的に名前の知られている劇場の大ホールや多数の観客を動員できるイベント会場である必要があります。
アーティストのカテゴリ
以上のように必要条件は述べてきましたが、これらはあくまでダンスの経歴でなければいけません。
アーティストビザの申請には自分がどの分野のアートでビザを申請しているのかを明確にしなければなりません。
移民局の判断では「ダンサー」「ダンス教師」「振付家」を別カテゴリと考えています。
ダンスをやっている人からすれば、全部「ダンサー」のジャンルの仕事じゃん、と思うでしょう。
それを理解していないほど移民局はダンスのことをわかっておらず、そんな人たちが審査をしています。
ちなみに「ダンサー兼ダンス教師」など掛け持ちのような感じで言うこともできます。
しかし「ダンサー兼ダンス教師」というのは取れる確率がかなり低いです。
なぜなら特殊能力という証明が難しいからです。
卓越能力者ビザ
O-1アーティストビザは別名「卓越能力者」ビザとも呼ばれ、一般人より優れている能力があるためアメリカにいてもらうことでアメリカに利益をもたらす、ということで発行されるビザです。
そして「ダンス教師」というカテゴリ、卓越能力と証明するのが非常に難しいです。
移民局の人はダンスを知らない一般人です。
なので能力の判断基準は学歴でしょう。
そしてバチェラー(学士)、マスター(修士)というのを持ってるアメリカ人はいくらでもいますので、それ以上の学歴が必要がないとアメリカ人以上に卓越しているとは言えません。
そこにダンスで学位を取るという文化すらない日本人がダンス教師としてビザを申請する、これは難しいでしょう。
なのでビザを取れている人はほぼ全員「ダンサー」「振付家」です。
もしくは「ダンサー兼振付家」でもいけます。
まとめ
以上のような資料がアーティストビザの取得に必要です。
これらのカテゴリをご覧いただくとわかるようにメディアが注目しやすくて、しっかりとプログラムなどの資料が発行されるバレエなどの方がこのような資料は集めやすく、アンダーグラウンドやストリートのダンサーは難しい条件になっていると言えます。
アーティストビザの上のアーティストグリーンカードも条件はほぼ同じで、もっと上の資料が必要になり、そのアーティストグリーンカードを取得したダンサーも私の周りではほとんどバレエ系です。
なのでアーティストビザを持っているダンサー=凄いダンサーということは一概には言えないと思います。
しかし移民局の人はダンスのことを知らない一般人、ダンサーの基準の凄いというものでなく、一般人の基準ですごいと思う資料、聞こえのいい資料の方が強力だということが現実です。
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