はじめに
これは私がアメリカでのダンサー生活の中で体験したツアーの中でも最も衝撃的だったアフリカ・ナイジェリアへ言った時の話です。
私が働いていたフルタイムのダンスカンパニーがオフの12月にあった話です。
1ヶ月休みになったのですが、友達の紹介で別のダンスカンパニーとツアーに行く仕事が入りました。
このようにメインで働いてるカンパニーが休みの時は運が良ければ人脈を経由して短期でできるショーや教えの仕事が入りますが、それが見つからずにカフェなどで普通のバイトをする人もたくさんいます。
ツアーカンパニーの仕事
このカンパニーはテレビ番組、アメリカズゴットタレントで取り上げられた影絵のカンパニーでドイツとアフリカの両方から招待される話がきて、キャストがもう1組必要になっていました。
メインカンパニーはドイツに行くことになり、臨時に集められたもう1組のキャストはアフリカへ。
アフリカに行く機会というのは人生でも滅多にない機会、世界中ツアーするカンパニーでもアフリカはなかなかコースに入っていません。
というのはまだまだダンスなどのエンターテイメントが浸透していない、戦争が行われている地域が多くあるなどの理由があるようです。
カンパニーの拠点へ
まずショーを作るのですが、このカンパニーの拠点はニューヨークから電車で2時間ほど離れたコネチカットという州にありました。
都市の面積自体が狭く競争率の激しいニューヨークよりも周辺の州のほうが場所があるので大きなリハーサルできる場所も安く見つかり、忙しいニューヨークから離れて住みたい富裕層も周りに住んでいるのでアートに対する援助金が集まりやすかったりします。
そのためニューヨークそのものよりも周辺の町のほうが大きいカンパニーがたくさんあるのです。
私がリハーサルで行った町もちょっと田舎の小さな町なのですが、そこにMomix、Pilobolus、Catapultという3つの大きなカンパニーの拠点があり、3階建てのカラスばりの大きなダンス学校があり、カンパニーが長期公演できる劇場もありました。
踊る環境がすべて整っていてダンスに没頭したいのであればニューヨークよりも楽しい場所ではないかと感じました。
ダンスの仕事をする場合はニューヨークでオーディションを受けるより、その周辺まで足を伸ばして見ることをお勧めします。
その方が良い契約の仕事が見つかるでしょう。
アメリカの伝統あるカンパニーのファミリー
私が参加することになったカンパニーはCatapultという名前で、元はPilobolusという50年近い歴史があるニューヨークのトップカンパニーの1つでした。
そのPilobolusで働いたディレクターが独立して別のカンパニーを作り、MOMIX、私が働いたCatapult、ペンシルバニア州にあるJunkなどファミリーカンパニーが今ではたくさんできています
ダンサー同士も繋がっている上に同じタイプの作品をするので、同じコミュニティのダンサーがそれぞれのカンパニーで使い回されたりします。
リハーサルのリーダーはMomixのダンスキャプテンと同じ人でした。
私に仕事を紹介してくれたダンサーもPilobolusと仕事をしたことがあり、その紹介で話が来たわけです。
ちなみにオーディションも行われたそうですが、そこで好みのダンサーを見つけることができなかったとのこと。
紹介だとこのようなオーディションをスキップしていきなり大きい仕事にたどり着けたりします。
ダンス以外の目線でショーを作る
これらのカンパニーの特徴は踊りを見せることよりも人間の体の動きの面白さ、ステージ上で様々な舞台装置を利用した効果を見せるということに主眼を置いているということです。
これは言葉で説明するよりも映像を見ていただくと理解できると思います。
Momixのショーの映像
これらの作品はダンサー以外の人も非常に面白いと感じやすく、劇場の観客も普段はダンスカンパニーの公演というのはちょっとマニアックなアートを見たい人が多く集まるのですが、これらのカンパニーに関しては子供づれの家族がサーカスのショーを見るような感じで見に来ます。
感性豊かな子供が面白いと感じるだろう、というのは納得ができます。
それに子供がアート系ダンスに興味を持つきっかけにもなるでしょうし、作品を作る際にダンス以外に焦点を移すことの重要さをしっかりと垣間見ることができました。
カンパニーの練習
作品作りはメインカンパニーと一緒に行うことになります。
メインカンパニーはアメリカズゴットタレントでも同じ作品を披露して慣れているので、それを教えてもらうという感じでした。
リハーサル
リハーサルは朝8時からカンパニークラスでバレエを受け、そこからリハーサル。
昼休憩が1時間入り、午後からも5時まで練習、それが月ー金曜でした。
そこから毎日ニューヨークまで帰るには遠すぎるのですが、この周辺にはカンパニーが借りている家があり、カンパニーメンバー全員で一緒に宿泊することになります。
つまり毎日朝から稽古して、稽古の後はみんなで買い物して自分達で自炊する共同生活です。
メンバーが重要
このようにツアーカンパニーというのはメンバーと常に一緒にいることになり、お互い仲良くやっていけるかということが重要になります。
ツアーに入ればバスや飛行機での移動、現地でのリハーサルから公演、ホテルでの宿泊など、24時間一緒にいるメンバーで家族よりも長い時間を共に過ごすことになります。
そのため、このようなカンパニーはメンバーの選考の際にオーディションで実力を見るだけでなく、その後で1週間一緒にリハーサルに参加させて、みんなとうまくやっていけるかを見るという選び方になります。
ちょっと癖のある人間は実力では受かっていても、性格で落とされることになります。
そのためカンパニーメンバーは人間的にも非常に良い人が多かったです。
給料は?
金銭のことをかなりぶっちゃけますが、普通は活動全部含めて週休でいくらという計算になります。
私の場合は単発のツアーでしたので時給計算でした。
時給15ドルで昼休憩は時給でなく昼飯代として20ドル支給されました。
ツアーの間は移動日でショーない日は80ドル、ショーのある日は120ドルというふうに日給で計算されます。
とはいえ家も用意されていて交通費やご飯代ももらえているので生活費はほぼかからず、貯金はどんどんたまります。
そのためダンサーの一番お金の良い仕事はツアーだと言われています。
フルタイムのツアーカンパニーだと?
ちなみに私の場合はこれ単発の仕事でしたが、一年契約で世界中をツアーするカンパニーもあります。
そこで働いた友達の話では、生活で記憶にあるのは、過ごしたのはほぼバス、飛行機、劇場、ホテルの中だけだったそうです。
ツアーで回るとなるとかなり過密スケジュールで回らないと採算がとれず、自由に観光できる日はまずないとのこと。
1年に1階ほどツアー先で1日休みということはあるが、疲れてホテルから動けず寝ていたらしく、世界中ほとんどの場所に行ったけど観光で見るものは何も見ていない、と言っていました。
そのため踊る条件としては良いのですが、人生毎年この生活の繰り返しはつらいでしょうし、何年かするとダンサーはやめていきメンバーが入れ替わることになります。
ダンサーを目指す人はなぜせっかく入ったカンパニーをやめるんだろうという人がいますが、実際やってみるとずっとはやりたくないという気持ちもわかるでしょう。
運営方法
このようなツアーカンパニーは現地に招待してくれるスポンサーがいて、いくらか金銭面でのサポートがあってツアーが組まれることになります。
なのでツアーをできるカンパニーというのは商業的にも成功して名前の知られているカンパニーしかできません。
また、新しいカンパニーが頑張って自分たちでツアーをしようとするのですが、予想以上に経費がかかり、ダンスカンパニーの間では「ツアーをするとカンパニーは潰れる」とまで言われています。
まとめ
ツアーカンパニーはこのような生活になります。
踊りながら世界中を見て回れるという印象の方もいるでしょうが、そううまくはいかないようです。
ただダンスに没頭できる期間にもなり、自分のキャリアとしてものちの人生に大きな助けになりますのでダンサー人生の経験としては良いでしょう。
では次回は実際にツアーでアフリカへ行った時のお話に続きます。
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