はじめに
コンテンポラリー系のダンスカンパニーのオーディションで必ず必要になること、それが即興で踊れることです。
審査の過程で1次、2次審査が振り付けで最低必要なテクニックとカンパニーの踊りについてこれるかを見て、3次審査以降はひたすら即興で踊りを見せるということがよくあります。
カンパニーの好みと自分の踊りの色
この審査では一番うまいダンサーではなく、一番カンパニーの色に合ったダンサーが合格します。
つまりオーディションに来た中で一番うまいダンサーでも落ちます。
そしてこのどんな色のダンサーが相手が好きかというのはセンスの問題で、どれだけ普段努力してダンスの練習をしていても踊りの方向性が違えば落ちます。
ダンスというのは競技ではないのでうまければ点数がついて優秀だと認められる、というものではなく様々な方向性があり、人それぞれ好みや好きな踊りの基準が違います。
ダンスカンパニーを目指すというのはそのように自分の踊りとダンスカンパニーの好みが違えば一生その仕事は得られないという道でもあります。
この虚しさに気付いた多くのダンサーはダンスカンパニーで踊るということに興味をなくし、自分で作品を作って活動しています。
自分で作品を作るほうが自分の本当にやりたい踊りだけをやっていけるわけです。
とにかくオーディションを楽しむ
私も即興でどれだけいい踊りができても、オーディションではピックアップされないということが続きました。
そこで「オーディションに受かる」ということは考えずに「オーディションを楽しむ」ことに集中するようにしました。
即興の時、たとえ審査する側は自分の踊りを好みでなくとも、他のオーディションを受けるダンサーたちも私の踊りを見ています。
そして本当にいい踊りを見せればアメリカというのは踊った後に誰かが「すごく良かった」と声をかけてくれます。
またその声をかけてくれた人から別件で仕事が来たこともありました。
このようにオーディションには受からなくても声をかけてくれた人がいるということで自分の練習してきたことは間違いではなかったと実感することができ、踊り続けるモチベーションになります。
いつしかオーディションにおいてはそのような過程を楽しむようになっていました。
日本人が苦手な即興
この即興は日本人が最も苦手とするものです。
バトルなどをしているストリートのダンサーは得意でしょうが、ステージ系のダンサーはできない人が多いです。
日本のクラスを受ける以外の踊る場所がないダンス環境では即興を踊る必要に迫られる機会自体ないからなのでしょう。
しかし個性を見せることが重要なアメリカではそうはいきません。
振付家の友達が作品で日本人を使った時の話です。
振付家はテーマを与えてダンサーにそれぞれ動いてみてくれと言ったのですが、これに対して日本人たちは「ちゃんと振りを考えてくれ」と文句を言ってきたそうです。
とんでもないことを言っていると思いました。
作品を面白くするにはダンサーの個性を見せることが大事で、振付家はまずダンサーにテーマを与えて動いてもらって、そこからアイデアをもらって振り付けを固めていくものです。
それをいきなり文句を言うなんて、いかに自分が素人か主張しているようなものでしょう。
ましてや好きにやらせてくれるなら自分の踊りをするチャンスです。
普段自分で練習しているなら練習の成果、自分の個性を見せるチャンスでこんなに楽しいことはないはずです。
それに文句を言うというのは普段練習していない証拠でしょう。
まとめ
このように自分の踊りを持つということはプロを目指す上でもっとも大切なことです。
むしろ「自分の踊り=自分のアーティストとしての声」ですので、これを作り上げること自体がダンサーとしての人生の目的と言えるでしょう。
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