前回学生ビザをとるために語学学校、ダンス学校などの選択肢について説明しましたが、もう1つの道として大学のダンス科に行くという方法があります。
はじめに言っておきますが、これはよっぽどめぐまれた家庭環境がない限り現実的な方法ではありません。
アメリカのダンス教育
日本ではダンスといえばヒップホップダンスやバレエがメジャーですが、外国でダンスといえばモダンダンス・コンテンポラリーダンスで、フルタイムのダンスカンパニーといえばほとんどがこのスタイル、バレエ団などもクラシックだけのカンパニーは少なく、コンテンポラリーができることは今の時代では必須となっています。
ヒップホップでもビヨンセやレディガガのバックダンサーはヒップホップ以外にもコンテンポラリー、バレエを大学で学び、なんでもできるという人は多いです。
学歴社会アメリカ
アメリカは日本以上に学歴社会で日本のようにバチェラー(学士)、マスター(修士)、ドクター(博士)と分かれている中からさらに細かい分類があったりします。
そしてアメリカ人はこの学位というものを特に気にし、ドクターまで取れば自分の名前にドクター〇〇とつけて名乗り、一生誇るといった感じです。
そしてこれがダンスにも存在します。
アメリカのダンス教育
アメリカのダンススタジオでは3歳からクラスを取り始めることができ、キッズダンスからヒップホップとバレエ、年齢が上がって行くにつれジャズダンス、コンテンポラリーと学べるダンスが広がっていきます。
この子供の頃学ぶコンテンポラリーはジャズダンスにちょっと新しいテクニックを加える程度でコンペティションでもよく行われていますが、大人になってから必要になるテクニックとは全然違うものです。
そして高校生の時に大学の専攻を選び、ダンサーを目指すのであればここでダンス専攻で大学を選びます。
そこで本当のコンテンポラリーダンスを始めるわけですが、コンペティションなどにでていた子供たちは自分たちの学んだことがそこから全然役に立たないとショックを受けたという話もよく聞きます。
とはいえ子供の頃の感覚では本当にアーティスティックなダンスというのは正直何が面白いのかわからず、やりたいとは思わないと思います。
なので子供の頃からそのようなダンスを学ぶ環境を作るのが難しいのでしょう。
アメリカの学費
正直、ダンスで学位をとるというのはよっぽど恵まれた環境がない限り難しいでしょう。
アメリカの大学は日本の大学よりかなり高額です。
名門のNYUやジュリアードなどは1セメスターで日本円で500万円ぐらいかかります。
つまり卒業するまでに何千万円必要になり、日本のようにアルバイトしながら、でもとても払っていける金額ではありません。
ほとんどのアメリカ人は奨学金を活用し、大学からお金を借ります。
そして卒業したら何十年かけてそれを返して行くというのがアメリカ人のよくある人生です。
そしてその奨学金は基本的に外国人には資格を与えておらず、アメリカ人しかもらえません。
つまり外国人にはこの選択肢はなく、韓国人の友達などは韓国の銀行からお金を借りてNYUに行ったと言ってました。
大学へ行くあることの利点
この大学へ行く利点ですが、まず在学中に一流の振付家が教えに来るのでその作品に出る機会があり、自己アピールになります。
運が良ければ卒業と同時にフルタイムのダンスカンパニーに雇われるということもあり、そうでなくても卒業後のオーディションでディレクターが知り合いであれば特によく見てもらえるでしょう。
それにプログラムも強力で1回のクラス完結のスタジオレッスンでは学べないような濃厚な内容まで学ぶことができます。
特にダンスバトルやコンペティションなど競争で踊りを判断する文化のある日本ではダンスのうまいの判断基準がアメリカのアートの世界と全然違います、これはアメリカに来た日本人の多くが感じることでしょう。
テクニックでは優ってるのにどうしてオーデョションでカットされるのか、と。
そのようにどのようなダンスがいいものなのか、というセンスを磨く意味でも良い環境と言えるでしょう。
学位があることの利点
これはパフォーマンスの仕事であれば実力があれば仕事をゲットした後はそんなに影響ないのですが、先ほども言いましたようにオーディションで有利になります。
大きいオーディションというのは何百人と来ますし、そこから受かるのは0〜3人ほどですので、ディレクターと知り合いという関係でもない限り目に止まるのは非常に難しいでしょう。
そして教えの仕事を手にいれる時には大きいです。
クラスを単発で教えるダンススタジオなどでは学位があるかないかで給料が変わってきます。
そして一番安定する仕事は高校・大学に講師として就職すること、これは学位なしでは不可能です。
なぜなら雇う側である大学などの学長はダンスに関する知識は一切ないので判断の基準が学歴しかありません。
ダブルメジャーという選択肢
このように学位を持って教えの仕事をすれば将来食べて行くことはできます。
しかしパフォーマンスで食べて行くのはどうなのかというと、実はかなりギリギリになるでしょう。
正直、一生パフォーマーの収入でやっていくのがきついという理由で多くのダンサーが30代で別の仕事に生活を変えていきます。
そのため大学の時点でダンスと同時にビジネスや看護など、2つのメジャーを同時に学ぶ人も多くいます。
そして卒業後ビジネスの方でメインの収入を得つつ、空き時間にダンスカンパニーで踊る人、または仕事後にダンススタジオで教える人。
正直このような生活の人たちの方が多くのプロダンサーより収入が安定しています。
そして賢い人たちは弁護士やコンピューターエンジニアなど、パソコンさえあれば週1日オフィスに行くだけでいい仕事をします。
このような人たちは時間の自由がきく上に経済的余裕があるので40すぎてもずっと踊っていられるという人が多いです。
私の知り合いでApple.incで働きながらビヨンセなどのバックダンサーをしている人もいます。
まとめ
このように大学に行くという選択肢は莫大なお金がかかります。
しかしアメリカ人と本当に対等な立場で勝負していこうとするなら必要なものとなるでしょう。
実際トップのダンスカンパニーに入ることのできたほとんどの日本人がこのような学位を持っています。
とはいえ大学に行かなくてはプロになれないというわけではありません。
そのような他の方法も次回解説していきます。
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